食品表示を知ろう(加工食品の場合)

食品表示とは
加工食品の食品表示は、食品を作っている製造者(もしくは売っている販売者)と消費者をつなぐための重要なツールです。商品を作っている人がその商品を売るために、売り場に立って、商品の説明をし続けることは不可能です。そのため、製造者はパッケージデザインや食品表示を使って、消費者にその商品の中身や保存方法など商品に関する情報を伝えます。
また、消費者はその表示を見ることによって、商品についての情報を得ることができます。食品表示は製造者と消費者のコミュニケーションツールなのです。
食品表示でわかること
アレルギーの増加や食品事故の発生などにより、消費者の食品表示への関心が高まり、スーパーなどで食品表示を見ている人が増えたように思います。食品表示を見ることで、どんなことがわかるのでしょうか?
表示を見ると、どこで作っているのか、原料はどこのものか、何が入っているのか、いつまで安全に食べられるのか、アレルギー物質が入っているのか、カロリーはどのくらいか、どうやって保存すればよいのかなど、たくさんのことがわかります。食品表示は小さいですが、とても大切な情報の宝庫だと言えます。
食品表示の作り方
食品表示法は2017年の改正で、主原料の原産地表示、栄養成分表示、製造責任者表示の3つが義務化されました。特に、製造者責任者表示について、これまで販売者だけの表示でよかったものが、この改正により、製造者を明示しなくてはいけなくなりましたが、まだ表示が正しくされていないケースが散見されます。
2024年にはアレルギー表示義務の変更、2025年には機能性表示食品に関する改正が行われており、都度、法令を確認する必要があります。食品表示は、表示すべき項目が決まっています。(商品がとても小さい場合などは一部省略できるものもあります。)
表示に必要な項目
- 名称
商品名ではなく一般名称 - 原材料名
使用しているものを使用重量順に全て書く。最も多いものについては原産地を記載 - 添加物
別枠を設ける、改行、原材料の後ろに「/」をつけて続ける、のいずれか - 内容量
- 賞味期限または消費期限
比較的品質が劣化しやすいものは消費期限、それ以外は賞味期限 - 保存方法
- 製造者名(販売者名)
- 栄養成分表示
これらの項目について、省略することはできません。また、アレルギー物質が入っている場合は、忘れずに記載するようにしましょう。
栄養成分表示の計算方法
食品表示法の改正により義務化された栄養成分表示ですが、どのようにして計算すればよいのでしょう?
計算の元となるデータは使っている原材料の表示や文部科学省の食品成分データベース、日本食品標準成分表などを使います。ここに掲載されていないものについては、他の似たようなもので代用することはできません。例えば、島みかんを使用している場合に、温州みかんのデータを代用するなどです。これらのデータベースなどにデータがない場合には、分析機関に依頼して、栄養成分を分析してもらい、それを使用しなくてはいけません。
実際の計算は、商品に使用している原料の使用割合に応じて算出します。その場合、「推定値」「この表示は目安です」などを書く必要があります。
栄養成分は、表示順に①カロリー(熱量)、②たんぱく質、③脂質、④炭水化物、⑤食塩相当量です。順番を変えてはいけません。ビタミンやミネラルなどの栄養成分については同じ枠内に記載しても構いませんが、機能性成分、例えば、ポリフェノール、カテキンなどは同じ枠内に記載することはできません。
食品表示法に違反すると
食品表示法に違反すると、指導・指示・従わない場合の措置命令・違反公表・事業停止・刑事罰などの罰則が科されます。罰則には懲役や罰金もあります。
違反は、そのような罰則により、事業者の信頼失墜を招くほか、回収にかかる費用発生、なにより、消費者の健康被害など、事業活動に甚大な被害を与えます。
正しい表示を行うことは事業継続に不可欠なものであるといえます。
まとめ
食品表示は事業者と消費者をつなぐ大切なツールであるとともに、健全経営のためにも重要な役割を果たしています。ほんの小さな食品表示ですが、たくさんの情報が詰まっています。
商品の中身やパッケージがいくら素晴らしいだけでは完成とはいえません。商品と食品表示が揃って初めてよい商品が完成したことになるのです。
執筆者プロフィール

株式会社ワイズプラス 代表取締役社長
森 好子(もり よしこ)
大学院で化学を専攻し、理学修士の資格を持つ研究者として、様々な商品開発に携わる。現在は、食の安全と品質を「科学」で支える専門家として、鹿児島を拠点に活動。
「なぜ、その商品をつくりたいのか?」というクライアントの情熱を大切にしながら、モヤモヤとした想いをカタチにする各種アドバイス・コンサルティングを実施。