だしパックによる食中毒について思うこと

今日は少しだけ専門的なことを。

16日
東京都の保育園で出されたきつねうどんで食中毒が起こりました。
食中毒の原因はヒスタミンです。

ヒスタミンはあまり聞き慣れない物質かもしれませんが、
魚に由来するアレルギー物質で、熱に強いのが特徴です。

この記事には、「だしパックの煮出し時間が長かったのが原因」と
書かれており、「ん?」と違和感を感じました。
なぜなら、ヒスタミンは魚を加熱した後に増えることはないからです。

魚にはヒスチジンというアミノ酸が含まれており、
これが微生物の作用で分解されてヒスタミンが作られます。
微生物の作用が起こるにはある程度の温度(20℃程度)が必要であり、
低温(5℃以下)ではヒスタミンは作られません。
また魚を加熱すると微生物は死んでしまうので、
加熱した魚体でヒスタミンが作られることはありません。

ということは、ヒスタミンはさば節とか鰹節とかを作る際の、
加熱前の魚で増えていたということになり、
だしパックを調合する際の、
だしの素にもともと食中毒を起こすだけのヒスタミンが入っていたということになります。

これはどういうことかというと、
鰹節やさば節を作る際、
原料となっている魚自体の処理条件が悪かったため、
加工前にヒスタミンが増えてしまい、
そのまま節を作って、だしパックにしてしまった。
それを煮出したため、調理時間に関係なく、
うどんつゆの中にヒスタミンが出てしまったということなのです。

だから、先述の「煮出し時間」は関係ないと思われるので、
違和感を感じたわけです。

今回の食中毒は、
このリスク(危害)をしっかり把握してものづくりをしなかった事により
起こってしまった事故であるといえます。

食品衛生法が改正され、2020年6月HACCP制度化が始まりました。
あちこちで、HACCPって?
とりあえず「計画」「実行」「記録」でいいんでしょという声が聞かれますが、
それとHACCPの考え方を取り入れた衛生管理は同じものではありません。
コロナ禍で、「それどころじゃないから・・・」というのも聞きますが、
安全安心なものを提供するのは食品事業者のつとめです。

今回のだしパックの食中毒は、
HACCPの本質を問いかけているような気がしました。

少しでも、本当のHACCPとはとお伝えできるように、
できる限りのことをしていきたいと思うのです。

森好子