極利かぼちゃ誕生秘話

先週21日から始まった『かごしま食のスペシャリスト』人材育成研修。
今回は農業にもスポットを当てたカリキュラムになっています。
ということで、22日土曜日には(有)エスランドルの上釜勝さんに
『食糧基地鹿児島の農業』
というテーマで異業種から農業に参入した時の体験や、
ブランド化に成功した「極利かぼちゃ」「白宝らっきょう」の誕生秘話についてお話ししていただきました。
今回、講義を彼にお願いしようと思ったきっかけは、
ここ数年、夏になると実家に届く、ひとつのかぼちゃでした。
このかぼちゃ、おいしいのはもちろんなのですが、
ひとつずつ、まるで高級メロンのように化粧箱に入っているのです。
通常かぼちゃは1つるで、12~13玉くらいが収穫できます。
しかし、この極利かぼちゃ、1つるから収穫するのはたったの1玉。
糖度は18度以上で、高いものは20度を超えることもあるそうです。
かごしまブランド第1号の加世田かぼちゃでもあるこの「極利かぼちゃ」は、
JAの技術指導員だったお父さんが、おいしいものがつくれるのだという見本を
近隣の農家さんに見せるため、水分の与え方など、緻密な研究を続け、
作り上げたものだそうです。
上釜さんは、もともと建築デザインなどを本業としていましたが、
25歳の時、「鹿児島を変えたい!」という思いから、帰鹿して独立。
その後、28歳の時に農業を継ぎたい!と決意し、父親に話したところ、反対されました。
しかし、1週間かけて説得し、かぼちゃ生産に取り組むことになります。
でも、そううまくいくはずもなく、はじめの3年間は失敗だらけ。
普通のかぼちゃは2ヶ月ほどは常温でも保存できますが、
極利かぼちゃは糖度が高いため、長持ちしません。
できたかぼちゃ1000個を泣きながら破棄したこともあるそうです。
そこから生まれたのが極利かぼちゃのフレーク。
添加物は一切使わないのですが、おいしさを維持した商品です。
極利かぼちゃフレーク
彼は、非常に研究熱心で、それまでの勘に頼る農業ではなく、
その勘を数値化できるよう、細かいデータをとり続け、
現在では、1万個以上の極利かぼちゃを出荷しています。
鹿児島の地元からおいしいという声が広がるようなブランドづくりがしたかった。
だから、地元の方から注文をいただいたら、宅配業者に頼むのではなく、
自分で配達をして、直接お客さんの声を聞いている。
今の農業は従事する人が儲からないような仕組みになっている。
だから、その仕組みを変えたかった。
飛び込み営業で得られたものは大きい。
失敗を恐れてはダメ。
まだ、若干33歳の上釜さん。講演をしたのは初めてで、
かなり緊張していらっしゃったようですが、
熱い思いが伝わってくるお話でした。
彼のような若い後継者が育つと、きっと農業も変わるのではないでしょうか。
私も、たくさんの元気をもらいました。
森好子